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真鍮(黄銅)の加工方法とポイント|難しいとされる理由について
真鍮
2022.8.2
真鍮(しんちゅう)とは銅に亜鉛を添加した合金の事で、金色に輝く美しい色あいから黄銅(こうどう、おうどう)とも呼ばれています。身近なものでは、5円玉やトランペットなどの金管楽器・アクセサリーに使われている金属素材といえばイメージしやすいでしょう。
真鍮は他の金属素材に比べてコストも比較的安く、切断・曲げ・切削・溶接など、あらゆる加工に対応できる点がメリットです。
しかし、その一方で加工が難しいと言われるケースもあります。このため、真鍮の加工を依頼する際は、実績と熟練の技術を持つ職人が在籍する業者の選択が重要なポイントといえるでしょう。
本記事では真鍮の加工を検討中の方や、真鍮を詳しく知りたい方に向け、加工が難しいとされる理由や、加工方法とそのポイントを含め、わかりやすく紹介していきます。
真鍮の加工方法とポイント
真鍮は合金の中でもとりわけ加工がしやすく、以下の3つがその大きな理由といえます。
- 優れた展伸性
常温で伸ばしても破損しないため、細い線や薄板の加工に好適
- 切削性の高さ
被削性を高める亜鉛が添加されているため、ボルトやネジなど精密加工が必要な機械部品の材料に適している
- 高い熱間鍛造性
熱間鍛造性に優れているため、熱を加える事で多種多様な形状に加工しやすい
これらにより、以降に紹介する「切断」「曲げ」「切削」「溶接」「研磨」などの加工が容易に行える点が真鍮の特性であり、魅力といえるでしょう。
一方その特性により、切削によるバリの発生や、熱由来の反りが見られるケースも多々あります。
また、真鍮は経年劣化により、金属組織を構成する結晶=粒界(りゅうかい)が腐食する「置割れ」が発生する素材である事も特徴です。
真鍮の加工を依頼する際は、技術の高さは元より加工後のリスクも踏まえ、適切なアフターフォローの提供ができる業者を選択する必要があります。
真鍮の切断
真鍮の切断は、その後の曲げや切削などに大きく影響し、最終的な加工品の仕上がり・精度にも関わる重要な工程といえるでしょう。
レーザー切断機の使用や、シャーリング・タップ・タレパン・カッター、チップソー、ロータリー切断機などを用いて、真鍮を高速・高精度にカットしていきます。
仕上がりを左右するのは、設備が整っていることはもちろん、職人の確かな技術と経験に基づいたノウハウ。これにつきます。
真鍮の曲げ加工
真鍮の曲げ加工では、その優れた展延性により「冷間加工」と「熱間加工」の2通りの方法が選択できます。
加工方法 | 特徴 | |
冷間加工 | 塑性変形を利用し、常温から再結晶温度未満で行う加工 | |
適性 | 大きめのRに曲げるなど比較的簡単なもの
(常温加工により、金属の変形抵抗が保たれ形状や精度が損なわれない) |
|
熱間加工 | 再結晶温度以上に加熱し、金属の変形抵抗を下げる事で金属の変形能力を高める加工 | |
適性 | 小さめのRや、波曲線のような複雑なもの
(変形抵抗が大幅に下がっているため加工がしやすいため) |
真鍮の切削加工
真鍮の切削加工では、「フライス加工」と「旋削加工」2つの工法が用いられます。
- フライス加工:固定した真鍮に対し、機械に取り付けた工具を回転させ切削する
- 旋削加工:真鍮自体を回転させ、工具を当て切削する
また、上記の切削加工を行う上で重要な2つのポイントは以下の2つです。
これらを防ぐには、加工条件を低めに設定したり、油性の切削油を十分にかけた上で加工するなどの対策を行わなければなりません。
また、真鍮は展延性に優れているため、切削加工時にバリが発生しやすいのが最大の難点です。
対策には適切かつ良質な工具の選定や、クーラント(冷却材)などを用い、摩擦熱による変形や溶着を防ぎ、バリの原因となる削り残しを無くす必要があります。
真鍮の溶接
真鍮の溶接には、下記2つの工法があります。
- 抵抗溶接
局部的に短時間で溶接を行う工法。溶接熱による部材への熱影響が少ない。抵抗スポット溶接・プロジェクション溶接・バット溶接・抵抗シーム溶接・抵抗スタッド溶接の5つに分類される
- ロウ付け接合
部品の接合方法の一種。接合する部品と部品をガスバーナー等で加熱し、加熱部に近づけ溶かしたロウ材を部材間に流し込み冷却して接合する工法
抵抗溶接は総称で、このうち真鍮の溶接に向いてるのは「抵抗スポット溶接」と「プロジェクション溶接」です。
抵抗スポット溶接は、抵抗溶接の中ではポピュラーな工法といえます。またプロジェクション溶接は、溶接後の負荷(熱歪等)を最小限に抑えるため、厚板の接合にも適しています。
これは熱が真鍮自体に拡散しやすく、融合不良や溶接時に発生する金属のカス(スラグ)巻き込みといった欠陥につながりやすいためです。
これら不具合の防止には十分な予熱が必要になります。他、冷却時の割れなど真鍮の溶接では注意すべき点が多く、対策としてロウ付け接合が用いられます。
真鍮の鏡面加工
鏡面加工とは切削後に行う後処理の1つです。表面を研磨して鏡のように滑らかに仕上げる加工方法で、鏡面研磨やミラー仕上げとも呼ばれます。
また、切削加工後に生じたバリを取り除く事が出来るほか、加工品の安全性を高めることも可能です。
鏡面加工とひと言でいっても種類があり、代表的な3つを下記にメリット・デメリットもふまえて紹介します。
種類 | 方法 | |
バフ研磨 |
綿やフェルトで作られたバフを高速回転させ、研磨剤を塗布しながら研磨 | |
メリット | 職人による手作業で行われるため、仕上がりが美しい | |
デメリット | 手作業のため仕上がりに差があり、大量ロットの生産が難しい | |
バレル研磨 (機械) |
タンク型の機械を使用、中に研磨させる素材と研磨石や研磨剤・水を入れ研磨 | |
メリット | 機械研磨のため、バフ研磨に比べて大量ロットの生産が可能 | |
デメリット | 部分的な研磨が出来ない | |
電解研磨 |
素材を電解研磨液に浸し、電気を用いて化学反応で金属表面を変化させて研磨 | |
メリット | 表面を均一に加工でき、細かい部分など研磨しづらい箇所も可能 | |
デメリット | 素材1つ1つに装置を取付ける必要があり、コストがかかる |
真鍮の加工が難しいとされる理由
真鍮は加工がしやすいといわれる一方で、そのメリットゆえ加工が難しくなる表裏一体な一面があります。その主な理由は、下記の2つになります。
- 高い展延性のため、バリが発生しやすい
- 熱伝導率が高く表面が酸化し、溶接が難しい
展伸性が高ければ、プレスやローラーで薄くしたり、ベンダーで曲げたりする加工が容易に可能ですが、その分バリも生じやすくなります。
そして、真鍮はもともと酸化しやすい特性があり、熱によって表面の酸化が進み、酸化銅の被膜が生じます。この状態で溶接加工をすれば溶接部分がもろくなるため、溶接加工する際は酸化銅が生じないように管理しなければなりません。
これらにより、真鍮加工の実績や工具・設備の整っていない業者だと、依頼しても断られるケースは少なくありません。
また、職人の高い技術を必要とするため、依頼した業者によって仕上がりに大きく差が出てしまうので、依頼先は十分に検討する必要があります。
真鍮は亜鉛の含有量で加工性が異なる
真鍮は銅(Cu)と亜鉛(Zn)の合金で、亜鉛の含有量によって加工性は異なります。
亜鉛含有量が30%までのいわゆる7/3黄銅はα黄銅と呼ばれ、軟らかさがあるため、その加工性は良好です。ただし600℃以上の高温加工には適さず、脆性が現れます。
40%を超えたいわゆる6/4黄銅は(α+β)黄銅となり、β相が出現する事で硬さと機械的強さが急激に増し、色合いも黄金色に近い黄色になります。
名称 |
銅 |
亜鉛 |
加工性 | 用途 |
α黄銅 | 70% | 30% | 軟らかく、高温加工に適さない
常温加工と中間焼きなましを実施 |
金管楽器など |
(α+β)黄銅 | 60% | 40% | 硬く、高温加工が可能
600~800℃で一次加工 常温で二次加工を実施 |
配線器具など |
このように身近な金属素材である真鍮の加工には、素材の特性を見極めた上で適切な工具や設備を用いて、職人の確かな技術で施す必要があります。
株式会社新進では、難しいといわれる真鍮の加工も、設備が揃った環境と、職人が培った経験と技で豊富な実績を誇っています。他社で断られた案件でも対応可能なので、まずはお気軽にご相談ください。