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ステンレスの切削性について|旋盤・フライス加工をする際のポイント

ステンレス

2022.3.16

ステンレスは金属の中でも切削が難しいと言われています。これは、ステンレスの特性である熱の伝わりにくさや、粘り強さが大きく影響しているのです。

 

そのため、他の金属と同様に切削すると、ステンレスが脆くなったり工具が破損する恐れもあります。防ぐには、使用する工具や切削条件を適切にし、クーラントを使用するなどして熱を逃すことが大切です。

この記事では、ステンレスの切削に関わる特性と、それを踏まえての切削加工のポイントを解説しました。

 

 

ステンレスの切削性について

 

ステンレスはさびにくい、硬いなどの特徴を持つ金属ですが、切削しにくい材料でもあります。切削しにくい理由は主に以下の通りです。

 

  • 熱伝導率が悪い
  • 粘性が高い
  • 加工硬化してしまう

 

 

ステンレスは熱伝導率が悪いので、切削加工をすると工具の先端部分に熱が溜まりやすくなってしまいます。その結果、工具の先端部分の破損や材料であるステンレスが熱の影響を受けやすいです。

熱による悪影響を小さくしようとすると、熱がこもらないように遅い速度で加工する、切削油を大量に使用するなどの工夫が必要です。

 

そしてステンレスは鉄などの金属と比較すると粘性が高く加工硬化しやすい特徴を持っています。

そのため長時間にわたり切削を続けると、材料のステンレスが硬くなってしまい削りにくくなり、工具が破損しやすくなるなどの可能性があります。

 

 

ステンレスの種類ごとの切削性

 

ステンレスには様々な種類があり、成分や金属構造によってそれぞれ分類されています。種類ごとに切削性は異なるので、加工の内容や使用先によって種類を使い分けるのが良いでしょう。

 

切削性に関しては、被削性指数という数値で表せます。被削性指数が大きければ大きいほど加工しやすく、小さければ小さいほど加工しにくい材料と判断可能です。

主なステンレスの種類と被削性指数は以下の通りです。

 

鋼種 被削性指数
オーステナイト系 SUS302 30
SUS303(快削性) 60
SUS304 35
SUS304L 40
SUS309S 40
SUS310S 40
SUS316 45
SUS317 45
SUS321 45
SUS347 40

マルテンサイト系

(未硬化処理)

SUS403 50
SUS410 50
SUS416(快削性) 65
SUS420 45
SUS420F(快削性) 55
SUS431 50
SUS440A,B,B 40
SUS440F(快削性) 60
フェライト系 SUS405 55
SUS430 50
SUS430F(快削性) 80
SUH446 55

引用:ステンレス (現場で生かす金属材料シリーズ)/丸善出版

 

 

切削性を高めた”快削ステンレス”

ステンレスの種類の中には切削加工がしやすいという特徴をもった「快削ステンレス」があります。快削ステンレスは成分の一部に快削成分を含むことによって、削りやすくしています。

 

例えば快削ステンレスのひとつであるSUS303は、SUS304と比較して約2倍近く被削性指数が高いです。

SUS303は快削成分であるモリブデン(Mo)を含むことに よって削りやすくしています

 

切削加工がしやすくメリットが注目されがちな快削ステンレスですが、以下のデメリットもあります。

 

  • 有害不純物である硫黄(S)を0.3%含む快削ステンレスもある
  • 硫黄(S)以外でも快削成分が含まれることによってさびやすくなり脆くなる
  • 複合材料によって異方性が高まるので性質が劣化する場合がある

 

上記のデメリットを十分に把握した上で、快削ステンレスの使用や材料の選択をするのが良いでしょう。

 

 

ステンレスを切削加工する場合のポイント

 

続いてステンレスの切削加工を行う際のポイントを解説していきます。

加工する際に重視すべきなのは、いかにステンレスや工具のチップ先端に熱を溜めずに冷却するかです。具体的な方法を紹介していきます。

 

 

適切な工具・条件をそろえる

 

ステンレスを切削加工するときには、材料選びのみでなく工具や加工時の条件にも気を配る必要があります。

 

 

ステンレス切削加工に適した工具

ステンレス切削加工時は工具の先端に熱がこもりやすく、工具自体も摩耗しやすいです。そのため加工時には耐摩耗性を考慮し、コーティング処理をした超硬合金製の切削工具を使用するのが良いでしょう。

 

加工内容別の工具選びは以下も参考にしてみてください。

 

  • 旋盤加工:熱を逃がしやすくするために大きめのバイトを使用する
  • フライス加工:ねじれが強く鋭利な刃を使用する
  • 穴あけ加工:デュアルリードタイプのドリル

 

フライス加工をする際には、多刃を選ぶと1枚の刃にかかる負荷を減らせるのでおすすめです。しかしステンレスは金属くずが工具と溶着しにくいので、金属くずの排出には常に気を配る必要があります。

 

 

加工時の条件・作業の進め方

切削加工時には適切な工具を選ぶだけでなく、作業時にもいくつか注意すべきポイントがあります。

 

  • 切削速度を遅くする
  • 切り込み量を小さくする
  • 送り量を小さくする
  • 工具や材料に合った切削時間を設定する

 

 

作業効率を考えれば切削時間が短い方が優れています。

しかしステンレスで切削時間を短くしようとすると、熱が高くなってしまい工具の破損しやすくなるので注意が必要です。

 

特に加工を始めたばかりのときは、遅い速度や小さい切り込み量や送り量からスタートし、様子をみるのが良いでしょう。

 

 

切削油(クーラント)は必ず使用する

 

ステンレスの切削加工をする際には、切削油(クーラント)を必ず使用してください。切削油とは、加工時に潤滑油として使用します。材料と工具の間に油膜を作り以下の働きをしてくれます。

 

  • 潤滑
  • 冷却
  • 洗浄

 

 

ほんの少しの隙間や凸凹にも切削油が浸透し、金属同士の摩擦を軽減するメリットがあります。加工時に切削油を使用すれば、材料と工具の滑りを良くし、工具や材料の熱を下げることが可能です。

 

切削油は主に以下の2種類に分けられます。

 

  • 不水溶性
  • 水溶性

 

 

不水溶性の切削油は、潤滑性に優れている一方で高温環境で発火する恐れがあります。

ステンレスの切削加工では工具や材料の温度が600~1000℃近くまで上昇するので、発火の可能性がなく冷却性に優れている水溶性の切削油を使用してください。

 

更に切削油をミスト状にして噴射することによって、切削油を効率的に利用できます。

 

 

ステンレスの旋盤・フライス加工の事例

 

最後に大阪・九条工場の職人が行っているステンレスの旋盤、フライス加工事例をいくつか紹介していきます。

 

ステンレスの切削加工事例

▲切削加工(旋盤・フライス・穴あけ)のすべてを行った事例

 

ステンレスの切削加工事例

▲小さな金属部品も切削が可能です

 

▲図面に忠実な切削加工をしています

 

ステンレスの切削加工事例

▲複雑な形も高い技術で切削ができます

 

以上です。ステンレスの切削は、知識と経験が品質を大きく左右します。

新進では、九条の町職人300名と協力して対応していますので、お困りの際はお気軽にお問い合わせください。

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