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アルミの溶接が難しい3つの理由と施工の具体的なポイントを解説
アルミニウム
2022.11.8
アルミは溶融点が低く溶けやすい、空気に触れると酸化被膜を形成してしまう、熱伝導率が高く作業時に部材全体に熱が広がる、などの理由で溶接加工が難しいとされています。
質の高い溶接加工を行うためには、アルミの持つ特性を理解し作業にどんな影響を与えるかを把握しなければなりません。
溶接加工を成功させるには、直流ではなく交流のTIG溶接機を使用する、母材が溶けるまでじっくりと待つ、加工後半に向けて作業スピードを徐々に上げていくなどの工夫が必要です。
本記事では、アルミの溶接が難しい理由や加工を成功させるためのポイントをわかりやすく解説していきます。
アルミの溶接が難しい3つの理由
アルミは軽くサビにくく強度が高いなどの特徴を持っていて多くの部品や材料として使用されています。
その一方で、溶接に関してはアルミの持つ特性が理由で加工の難易度を上げてしまっています。
溶接が難しくなってしまうアルミの特性を3つ見ていきましょう。
- 溶融点が低い
- 酸化皮膜に覆われている
- 熱伝導率が良い
溶融点が低い
アルミは固体が溶け始め液体になり始める温度である溶融点が660℃であり、鉄や銅の1,000℃以上と比較すると金属の中でも低めです。
溶融点が低いのでアルミの溶接を行おうとすると、母材がすぐに溶け落ちてしまいます。
酸化皮膜に覆われている
アルミの表面は空気に触れると酸化して薄い膜である酸化被膜を作ります。酸化被膜は溶融点が約2,000℃でありアルミ自体よりも1,300℃以上も高いです。
アルミそのものの溶融点の低さと、空気に触れると酸化被膜を作ってしまうことが、アルミの溶接が難しくなる大きな理由です。
熱伝導率が良い
アルミは金属の中でも熱伝導率が高いので、溶接時の熱が部材全体に広がりやすいです。
そのため、溶接部分が解け始めた頃には、部材全体が高温になってしまいます。
部材全体が高温になったことにより、溶接部分の溶けるスピードが次第に速くなってしまうので、作業者の溶接技術が問われるのです。
アルミ溶接を上手に行うための3つのポイント
質の高いアルミの溶接を行うには、先ほど解説したアルミの溶接が難しい理由と、金属としての特性を押さえて作業を行いましょう。具体的には、これから解説する3つのポイントを作業時に意識してください。
なお、アルミの溶接方法にはいくつかありますが、本記事では一般的によく行われているTIG溶接(イナートガスアーク溶接)を前提に解説していきます。
- 交流のティグ溶接機を使う
- 母材が溶けるまでじっくりと待つ
- トーチの送り速度は徐々に早める
交流のティグ溶接機を使う
TIG溶接機には交流と直流の2種類がありますが、アルミ溶接時には交流のTIG溶接機を使用しましょう。
というのも、交流のTIG溶接機はアルミの酸化被膜を除去してくれるからです。これをクリーニング作用と言います。
交流のTIG溶接機では、電流の向きが変化することにより電極側もプラスとマイナスに変化します。
電極側がプラスのときに酸化被膜の除去を行い、電極側がマイナスのときに溶接作業を進めることができるので、質の高い溶接加工を行えます。
母材が溶けるまでじっくりと待つ
アルミは酸化被膜を形成しているので、母材が溶けにくいです。
母材が溶けていない状態で溶加材を入れても、表面がダマになるだけで溶けこまない、あるいは酸化被膜を巻き込み溶接部分に黒い斑点ができてしまう、などの恐れがあります。
トーチの送り速度は徐々に早める
アルミは熱伝導率が高いので、加工の前半と後半では母材の溶けるスピードが変わってしまいます。
溶接痕を均一にし美しく仕上げるためには、作業時に少しずつ溶接スピードを上げていかなければなりません。
パルス機能があると溶接不良を改善できる
アルミの溶接を行うときには、パルス機能が備わっている溶接機を使用するのがおすすめです。
パルス機能とは、高い電流と低い電流を交互に繰り返す機能のこと。パルス機能付きの溶接機を使用すれば、以下のように電流の高さごとの強みを活かした作業を行えます。
- 高い電流:母材を溶かす
- 低い電流:母材が溶けてできたプールを冷やし固める。固めることによって、溶け落ちを抑える
以上がアルミ溶接のポイントです。質の高い溶接を行うには、アルミの持つ特性への理解や高い加工技術が必要になります。
「アルミの溶接加工をしたけど上手くいかなかった」という場合には、金属加工工場への依頼もご検討ください。
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