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銅の切削加工のポイント|種類ごとの切削性と安全面について
銅
2022.5.22
銅は他の金属と比較して、柔らかく切削加工しやすい金属です。金属加工にあまり慣れていない方が作業しても、硬くて削れない、作業しにくいと感じる可能性は少ないでしょう。
その一方で、銅は粘り気があり柔らかいので、逆に加工が難しいと感じる方が多いのも特徴の1つです。
銅は、純銅と銅合金の2種類に分類でき、それぞれ更に細かくわけられます。種類によって切削のしやすさや加工をする際のコツが異なるので、部材にする銅の特性を把握して作業するのが大切です。
本記事では、銅の種類とそれぞれの特徴を詳しく解説。更に追加して、銅の切削加工を行う際のポイントや工具の選び方を紹介します。
銅の主な特徴と切削性
銅は他の金属と比べて柔らかい金属です。そのため、加工時に材料が固くて削りにくいと感じることは少ないでしょう。
熱伝導率も高いので、工具や材料に熱がこもらず逃がしやすい点も加工のしやすさに一役買っています。
柔らかさや熱伝導率の高さ以外で、銅が持つ特徴は以下の通りです。
- 導電率が高い
- 熱に弱く200℃以上では軟化してしまう
- 錆びにくい
- 磁性がない
- 金以外で唯一、金色の光沢を持っている
銅は非常に柔らかく切削性に優れている一方で、他の金属加工に慣れている方からすると「柔らかすぎる」と感じることもあるようです。
柔らかいので思ったより伸びてしまう、バリが大量に発生してしまうなど銅の加工に慣れていない方は、扱いに注意が必要です。
加工時には銅の特徴をよく理解し、切削速度を速くするなど金属に合った加工方法を選択するのが良いでしょう。
銅の種類と切削性
銅は成分によって分類でき、種類ごとに切削性も異なります。それぞれの特徴は、以下の通りです。
純銅
純銅とは工業用に製造された純度の高い銅であり、製造時に残った酸素量によって、更に3種類に分類されます。
種類 | 特徴 |
タフピッチ銅 | 200~500ppm程度の微量な酸素を含む
酸素を含んでいるので600℃以上の加工には向かない 切削性は高いが、高温作業時の割れに注意が必要 |
りん脱酸銅 | りんを添加して酸素を除去した純銅
りんを加えている分、導電率の高さが損なわれている 柔らかく伸びやすいので、切削加工に向いている |
無酸素銅 | 酸素量は0.001~0.005%
酸素がほとんど含まれていないので、高温下の作業に向いている 他の純銅に比べて、粘りが強いので切削性は劣る |
銅合金
銅合金とは、他の金属と銅を合成させた金属です。熱伝導率や導電性の高さなど銅が持つ特徴を活かしつつ、剛性としての特徴を持たせています。
銅合金は銅と合成する金属によって、それぞれ分類されています。特徴は、以下の通りです。
種類 | 特徴 |
高銅合金 | チタンやベリリウムなどの金属と合成している
熱伝導性や導電性を維持しつつ、強度を高めている 作業時に火花が出ないので、切削加工しやすい |
黄銅 | 亜鉛と銅を合成して作られた金属
亜鉛の含有量によって色味が変わる 亜鉛と合成することによって、強度が増すので細かい加工もしやすい 亜鉛の比率が上がるにつれて、強度が上がる |
青銅 | 銅と錫を合成させた金属
錫の含有比率によって色味が変化する 耐食性に優れている リン青銅やアルミニウム青銅など更に細かく分類されている 青銅の中でも、アルミニウム青銅は粘りがあるので切削加工時には刃先が部材に食い込まないように注意が必要 |
白銅 | 銅とニッケルによる合金
ニッケル比率が40~50%の場合、銀のような輝きを放つ 耐食性や耐海水性に優れている |
銅の切削加工をする場合のポイント
本記事ですでに解説したように、銅加工を行うときには部材となる金属の特徴を理解し、部材や加工する形状に合った加工方法を選択するのが大切です。
切削加工を行うときのポイントを3つ紹介していきます。
切削速度は速くする
加工時には、切削速度を速く設定してください。
一般的に硬い金属ほど、速度を遅くする必要があります。硬い金属で速度を上げて加工をしてしまうと、工具や部材に熱がこもり、工具が摩耗してしまい刃先や工具の寿命が短くなってしまいます。
銅は他の金属と比較して、柔らかいので切削速度を上げても問題ありません。逆に速度が遅すぎると、加工面の質が下がり、削りかすも発生しやすくなるので注意が必要です。
銅は切削抵抗が大きい金属でもあります。切削抵抗とは、加工時に部材が工具を押し戻してしまう力です。
ただし、切削速度を上げると、工具や部材が高温になりやすくなってしまいます。
銅は熱伝導性が高いので、部材や工具から熱を逃がしやすいですが、200℃以上の高温になると軟化してしまいます。銅は溶着温度も低いので、作業時には熱を逃がす工夫をしておくのも大切です。
すくい角が大きいシャープな工具を使用する
銅は他の金属と比較して柔らかく、粘り気が強い特徴を持っています。削りカスも発生しやすいので、すくい角が小さいと加工時に発生する削りかすを上手に逃がせなくなってしまいます。
更に銅は溶解温度が低く、すくい角が小さいと削りかすが工具に溶着しやすくなってしまうので注意が必要です。
銅の切削に合う油性のクーラントを使用する
水溶性クーラントを用いると、銅と反応してしまい変色する恐れがあります。
部材が変色してしまうと、見た目も悪くなってしまいますし、選んだクーラントによっては変色だけでなく銅の成分がクーラントに溶け出し、べたつきが発生してしまう場合もあります。
銅の切削中は粉塵に気をつける
銅自体は安全性の高い金属ですが、銅と他の金属を合成している銅合金の中には毒性がある金属もあります。
例えば、ベリリウム銅は粒子や常軌を吸引してしまうと、慢性的な肺疾患や鼻、咽喉粘膜の炎症を起こしてしまう可能性があります。
安全に作業を行うためにも、ベリリウム銅の加工時には、粉塵に注意しておかなければなりません。特にベリリウム銅は、銅合金の中でも粘り気があり硬く、削りかすや粉塵が発生しやすいです。
ベリリウム銅に限らずですが、銅の加工を行う際には以下の点にご注意ください。
- 旋盤加工やフライス加工の際には必ず粉塵マスクを着用する
- 湿式で加工を行う
- クーラントの供給量を多くする
株式会社新進は、銅加工を常日頃から行っている町工場との強いネットワークを持っています。他社で加工を断られてしまった方や銅加工にお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合せください。
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