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アーク溶接の作業手順|事前準備や基本の流れ、注意点について解説
溶接
2024.7.4
アーク溶接は、溶接の中でもっとも身近な方法です。そのため、設備自体はすぐに揃えることができますが、実際の作業はかなり難しく、経験によって仕上がりが大きく異なります。
経験そのものは自らが溶接をすることでしか補えません。しかし、具体的にどう進めるべきか、基本的な流れが分からないと作業ができないため、まずは基礎的な知識を学ぶ必要があります。
この記事では、アーク溶接の基本となる作業手順を紹介し、その前の準備やアークを発生させる方法まで解説しました。加えて、溶接欠陥を防ぎ、安全を確保するための注意点もまとめましたので、基礎情報としてご覧ください。
アーク溶接に必要な道具
アーク溶接では様々な道具を使います。とはいえ、必ず必要なものばかりではないですが、作業工程と安全面を踏まえて以下の7つは揃えましょう。
溶接中は、強い光とヒュームと呼ばれる金属蒸気が発生するので、マスク等の防御策は必須です。加えて、火花も出るので布製の軍手などは控えてください。
また、溶接後に角度の調整などで母材を叩くことがあります。さらには、ビードを覆っている被覆材(フラックス)を取り除く必要があるため、ハンマー等を用意することをおすすめします。
アーク溶接の基本的な作業手順
具体的な作業手順は以下の通りです。各工程で重要なポイントがあるため、その点も踏まえて解説します。
- 安全確認
- 作業前の準備
- 溶接開始
- 後処理
安全確認
アーク溶接は危険を伴う作業です。まずは周辺に人がいないか、燃えるものがないか確認しましょう。
油があると火花で一気に火災が起きてしまうので注意してください。また、作業者自身も布製の燃えやすい物を身につけていないかチェックしましょう。
作業前の準備
溶接機のケーブルや溶接棒を取り付けます。各ケーブルはゆるみがないよう設置して、損傷による露出がないか確認しましょう。
また、溶接棒がなくなると作業ができないので、余分に用意しておくことをおすすめします。
溶接開始
溶接棒を持って溶接機の電源を入れると作業の開始です。母材表面に溶接棒の先端をこするとバチっと音がし、「ボー」という音とともにアークが発生します。
溶接中はしっかりと姿勢を固定して、溶接棒と母材の距離が均一になるように気をつけてください。溶接棒は時間とともに短くなるので、少しずつ溶接棒を下げながら作業しなくてはなりません。
後処理
溶接を終えたあとは表面のスラグ除去を行います。ただし、溶接後すぐだと高温の破片で火傷をする可能性があるため、時間をおき温度が下がってから作業をしましょう。
加えて、溶接終了後はすぐに現場を離れず、1時間程度は様子を見ることが大切です。火花によって、30分を過ぎても発火したケースもあるため気をつけましょう。
アークの発生方法
アークは母材と溶接棒をくっつけることで発生します。しかし、そのくっつけ方には種類があり、何度か試してみて作業者に合った方法を選ぶ必要があります。
一般的にはタッピングかブラッシングが行われていますが、接触法はアークストライクと呼ばれる欠陥が起きにくいためおすすめです。
また、交流のアーク溶接機だと、アークがとても不安定ですぐに消滅するケースが多いので、何度も練習して感覚を身につける必要があります。
バックステップ法について
溶接棒には被覆材(フラックス)が塗布されています。この被覆材は、アーク発生後すぐには活性にはならないので、そのまま溶接すると欠陥を引き起こす可能性が高いです。
そのため、溶接開始の位置より20〜30mmほど先でアークを起こし、開始位置に戻して接合を行う手法をバックステップ法と言います。
これにより、溶接始めに起こるブローホールを防げるため、高品質に仕上げることが可能です。
アーク溶接を行う上での注意点
アーク溶接はとても難しい作業ですが、実際に溶接をすることでしか分からないことも多いです。しかし、安易に挑戦すると溶接不良や事故を起こす可能性もあるので、最低限として以下の点に注意して行いましょう。
- 溶接機の種類と設定に注意する
- 適切な溶接棒を選択する
- 防護服やマスク等は必ず装着する
溶接機の種類と設定に注意する
アーク溶接機は、大きく分けて直流と交流の2種類があります。交流はコンセントの電圧をそのまま使用し、直流は変圧する必要があるため内部構造が複雑です。
そのため、交流の溶接機は安く手に入りますが、アークが安定しないというデメリットがあります。直流は高価ですが、作業がしやすいので初心者向きです。
また、家庭用電源でも使用できる100Vタイプや、より厚みのある金属材でも溶接できる200Vタイプと様々あります。使用環境に合った溶接機を選んでください。
適切な溶接棒を選択する
電極となる溶接棒は、溶けて母材と一体化して金属の一部になります。そのため、溶接棒は何でもいいわけではなく、母材と似た成分のものを選ぶ必要があるのです。
溶接棒の種類はJISに規定されているので、JISを基準に溶接棒のカタログ等を参考に選びましょう。
加えて、被覆材にも様々な種類があり、それぞれで特徴が異なります。溶接棒そのものと被覆材の種類と特徴を意識して、適切なものを選びましょう。
防護服やマスク等は必ず装着する
溶接は電流や高温のアークを利用するため、とても危険な作業です。ほんの少しの作業でも油断せず、必ずマスク等を装着して安全対策を行ってください。
また、溶接の際に発生するヒューム(金属の蒸気)は、体内に蓄積して健康被害をもたらす可能性が高いです。防塵マスクをつける、換気をしっかり行うなどの対策をして作業を行いましょう。
以上です。株式会社新進では、アーク溶接を始めとした金属加工のコーディネートを行っています。
溶接でお困りの場合は、お気軽に以下ページよりお問い合わせください。
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