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チタンとは|特徴や性質、代表的な用途について
チタン
2022.3.26
今回紹介する「チタン」は、数ある金属の中でも比較的新しい素材です。しかし近年では、「チタン製メガネフレーム」「チタン製アクセサリー」等、工業分野以外でも目にする機会が増えています。
当記事では医療現場や航空現場等、繊細な箇所で活用されるほど高性能な特徴を持ちながらも、アクセサリーにも活用される美しさを持ったチタンについて解説します。特性やデメリットはもちろん、チタン発見の歴史やその由来、現在の活用に至るまで網羅して解説するため、この記事でチタンについて詳しく学べます。
チタンとは?
「チタン製フレーム」「チタン製ピアス」等、わたしたちの身近でもチタンという言葉を耳にしますがどのようにして広く活用されるようになったのでしょうか。
まずは基本情報や、発見から実用化されるまでの歴史を解説します。
チタンの元素記号は「Ti」
チタンは元素記号の22番目に該当し「Ti」と表示されます。素材の色は銀灰色ですが、加工によって美しい色彩を出すことも可能です。
チタンの由来はギリシャ神話の「タイタン」
「チタン」の名称は、ギリシャ神話に出てくる地球最初の子「タイタン(ティーターン)」に由来します。名付けたのはドイツの科学者であるマルティン・ハインリヒ・クラプロートと言われています。
チタンの歴史
チタンの歴史はまだ浅く、発見されてからまだ200年ほどしか経っていません。参考までに同じく金属物質の銅は発見から約6,000年、鉄は約4,000年です。
発見は1790年
最初にチタンを発見したのはイギリスの牧師兼アマチュア鉱物学者のウィリアム・グレゴールでした。しかし当時はまだチタンとは呼ばれておらず、発見されたメナカン谷にちなみ「メナカイト」と名付けられていました。
しかし発見からしばらくは広く知られることはなく、チタンとして呼ばれるようになるのは発見から約4年後のこと。先述したドイツの科学者によって「チタン」と名付けられました。
世にチタンとして知られたのは発見から100年後
チタンが発見されてからも「チタンから不純物を取り除く作業」が難航し、チタンの活用は進みませんでした。しかし1910年にアメリカの科学者によって純度99.9%のチタン抽出に成功。続いて1946年にはルクセンブルクの工学者によってチタンの大量生産が可能になりました。
工業で普及し始めたのは1946年からとまだ新しい素材
1946年にチタンの大量生産が可能になり、1950年代には軍用機にチタンを活用できるようになりました。日本でのチタン活用は1970年代からとさらに近年になります。
しかし日本国内の技術者により、世界で初めてチタンの発色に成功したり生活必需品に活用されるようになり、広がりを見せています。
銅や鉄に比べるとまだまだ発展途上の金属ですが、素材の特性からこれからも様々な分野での活用が期待されます。
チタンをめぐるソ連とアメリカの争い
チタンは素材の有用性から、かつては争いを引き起こすきっかけにもなりました。ソ連とアメリカの冷戦時においては、アメリカ軍が世界中のチタン市場の買い占めを実施しました。
結果的に買い占めは失敗に終わりましたが、その有用性は歴史的にトラブルをも生み出しました。
地殻中にもチタンがある
地球の表層を意味する「地殻」の部分にもチタンは存在します。地殻の大部分は酸素とケイ素が占めていますが、チタンを始めとした金属物質も含まれています。
下記表は地殻を構成する金属物質の一部ですが、チタンは4番目に多く含まれる素材です。
金属物質 | 地殻の含有量(%) |
アルミニウム(Al) | 8.2 |
鉄(Fe) | 6.3 |
マグネシウム(Mg) | 2.9 |
チタン(Ti) | 0.66 |
チタンの主な特徴や機械的性質
▲チタンを使用した製品
チタンを歴史的背景から解説しましたが、当項目ではチタンの機械的性質から紹介します。チタンには以下6つの特徴があります。順に見ていきましょう。
- 軽い
- 強い
- 耐熱性
- サビに強い
- 美しさ
- 安全性が高い
チタンは軽い
チタンの最も有名な特性として「軽量性」が挙げられます。軽さを表す比重値は4.51と ステンレスの約60%ほどの軽さです。
チタンは強い
チタンそのものはそこまで強度が強くありませんが、チタン合金になると強度が圧倒的に高くなる特徴があります(下記表を参考)
金属の密度あたりの引っ張り強さを表す比強度で比べると、鉄の約2倍、アルミの約3倍を誇ります。
引張強度(N/mm2) | 比強度 | |
チタン合金 | 999 | 225.5 |
ステンレス | 588 | 74.4 |
アルミニウム合金 | 212 | 75.7 |
チタンは熱に強い
チタンは耐熱性に優れており、他の金属と比較すると下記の通りです。
物質 | 溶融点(℃) |
チタン | 1,668 |
鉄 | 1,530 |
銅 | 1,083 |
500℃までは高い比強度をもつため、耐熱性が必要な部材の中では極めて優秀な金属です。したがって航空分野はもちろん、原子力や火力発電等高温下にさらされる部品に活用されます。
チタンはサビにくい
チタンは耐食性が高いという特徴があります。
空気中で素材表面をサビから保護できる物質に覆われるため、サビに強く海水に触れる船舶の本体や、空気に触れ続ける瓦やドームの屋根等に活用されています。
チタンは美しい
「チタン製」と聞くと、どこか高価なイメージや洗練されたイメージを抱きます。
実際にチタンは100種類以上の色を作り出すことが可能で、一般的な銀色ほかに虹色の加工もできます。
ブライダルリングの店舗を見ると、いぶし色の指輪や虹色に輝くチタン製の指輪が販売されています。金属アレルギーを避け、デザイン性の高いアクセサリー作りにも活用されています。
チタンは安全
チタンはペースメーカーや人工関節に活用されるように、安全性が高い金属です。
有害となる原因の「イオン発生」が少なく、生体への適合性が高い特徴から、医療現場での活用が進められています。
チタンのデメリットについて
メリットが多いチタンですが、性能の高さから高価格だったり、加工がしにくいデメリットもあります。
チタンは価格が高い
高性能な分、高価格な金属に分類されます。
原因としては、チタンは資源的に豊富なものの、精錬する「クロール法」では膨大なコストがかかり生産数は限られるためです。
チタンは熱を通しにくい
耐熱性に優れる反面、熱伝導率の低さからチタンは「加工しにくい」という特徴を持ちます。熱伝導率が低い物質は加工時に発する熱が逃げにくい特徴を持つため、素材と工具がくっついてしまったり、切り粉で品質低下を招きます。
チタン合金とは?チタンとの違いについて
チタンの中には「純チタン」「チタン合金」があります。特徴を押さえておきましょう。
純チタンは純度が高いチタンを指す
純チタンは国内で一般的に活用されている素材です。主に建築や土木関連、電力等の分野で使用されます。
チタン合金は用途に応じ性能を向上させたもの
チタン合金は使用する用途にあわせてチタンの性能を向上させた素材を指します。具体的にはチタンを主成分にしながらも、アルミニウムやバナジウム等を加えることで 耐熱性や加工性、クリープ強度などを高めた素材です。
純チタンよりも高価かつ加工が難しい特徴があり、主に医療や航空分野で活用されています。
詳しくは次の記事にまとめていますので、そちらの記事をご覧ください。
チタンの代表的な用途
最後にチタンが活用されている具体的な事例を一覧で紹介します。
専門的な分野以外でもスポーツ用品や調理器具等、わたしたちの身近なものにも使われているチタン。「ここにも使われていたのか」と気づくと、素材への親近感を覚えます。
分野 | 使用例 |
宇宙・航空 | ジェットエンジン部品(圧縮機、ディスク等) ロケット、ミサイル、人工衛星部品(ロケットブースター、燃料タンク等) |
電力 | 原子力・火力・地熱発電の部品(配管、熱交換器等) |
建築・土木 | 屋根、外壁、金具、標識、手すり、工具等 |
輸送機器 | 自動車部品(ボルトナット、ホイール、マフラー等) 船舶部品(船体、マスト、水中翼等) |
楽器・音響 | スピーカー、ドラム、振動板等 |
医療 | 人工骨、人工関節、手術器具、ペースメーカー、車椅子等 |
スポーツ | テニスラケット、スキー板、ボブスレー、スパイク等 |
装飾品 | 時計、メガネフレーム、ピアス、ネクタイピン、ライター等 |
調理器具 | フライパン、魔法瓶、中華鍋、包丁等 |
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