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二相ステンレスとは?|種類と特徴、溶接や熱処理などの加工性を解説

ステンレス

2024.12.11

二相ステンレスとは、オーステナイト相とフェライト相が1対1で存在しているステンレスです。他の種類と比較すると強度が高く、腐食環境の元でも割れが起きにくいことから様々な場所で使われています。

 

各相が含まれることでメリットが多い一方で、二相系にはデメリットもあります。例えば、強度が高く加工硬化するので難削材であること、高温加熱すると靱性の低下などが起きてしまうこと、が挙げられます。

 

この記事では、二相ステンレスの種類やそれぞれの成分、特徴や特性をまとめました。また、加工における注意点や用途まで押さえましたので、最後まで読めば概要は全てわかります。

 

 

二相ステンレスとは?

 

二相ステンレスはオーステナイトとフェライト2つの組織をもつステンレスです。そのため、オーステナイト・フェライト系ステンレスとも呼ばれ、その他に二相系やデュプレックスなどとも言われています。

 

二相系はそれぞれの相をもつため、両相の性質を活かしたステンレスになっています。その性質を以下3つにまとめ解説します。

 

  • 種類と成分
  • 物理的性質
  • 機械的性質

 

 

種類と成分

 

一般的な二相系の種類とそれぞれの成分は以下の通りです。

引用:日本工業規格 JIS G 4303:2012

 

オーステナイトはニッケル(Ni)やマンガン(Mn)などを、フェライトにはモリブデン(Mo)やチタン(Ti)などを添加して組成しています。二相系はどちらも持ち合わせたステンレスなので、それぞれの成分も含有しています。

 

基本的に各相は1対1です。しかし、成分のバランスを変えたり新たに元素を添加することで、上記の一覧表(汎用二相系)以外にも以下のような様々な二相ステンレスが作られています。

 

汎用二相ステンレス以外の種類
  • スーパー二相系
  • ハイパー二相系
  • リーン二相系

 

 

物理的性質

 

二相系の物理的性質は以下の通りです。

引用:ステンレス鋼大全|日刊工業新聞社

 

二相の性質を持っているため、物理的性質は両相のほぼ中間になります(密度や質量など)。

しかし、熱伝導率のように中間にならず低い数値を示すケースもあり、オーステナイト系と異なり磁性もあります。

 

 

機械的性質

 

二相系の機械的性質は以下の通りです。

引用:日本工業規格 JIS G 4303:2012

 

二相系は硬く、オーステナイト系やフェライト系と比べても耐力や引張強さに優れています。また、オーステナイト系の欠点とも言える耐応力腐食割れも発生しにくいです。

 

加えて、フェライト相が多少の脆化傾向を示しても、オーステナイト相によって靱性の低下を防止できます。ただし、高温加熱を受けると、フェライト相が475℃脆化などで靱性が極端に落ちるため注意が必要です。

 

 

二相ステンレスの特徴

 

二相ステンレスは異なる結晶構造を持つことで、他のステンレスにはない優れた特徴をしています。具体的な特徴を以下3つに分けて解説します。

 

  • 高強度である
  • 耐食性が高い
  • 価格が安定している

 

 

高強度である

 

二相系は他のステンレスと比べて強度がとても高いです。例えば、耐力や引張強さでは他と比較すると以下のようになっています。

引用:日本工業規格 JIS G 4303:2012

 

加えて、二相系は耐衝撃性にも優れています。そのため、重い荷重がかかる構造部や高強度が求められる箇所に二相系は使用されています。

 

 

耐食性が高い

 

二相系は耐食性に優れています。オーステナイト系は耐応力腐食割れが欠点ですが、二相系は腐食環境下でも割れが起きにくいです。

また、耐孔食性や耐海水性も同様に高いですが、これらのメカニズムについてはっきりしたことは分かっていません。

 

なお、二相系は高温加熱するとフェライト相が増えます。これにより耐食性は劣化するので、高温環境下での使用は避けなくてはいけません。

 

 

価格が安定している

 

ステンレスにはニッケルなどの高価なレアメタルが含有されています。オーステナイト系はニッケルが多く含まれていて、価格が不安定になりがちです。

 

一方で二相系は、ニッケルの量が比較的少ないです。そのため、価格変動のリスクが起きにくいので、資材調達が安定して行えます。

 

 

二相ステンレスの加工性

 

二相系は、オーステナイトとフェライトの両組織が共存しているため、各加工もそれぞれの特徴を踏まえて行う必要があります。

以下の加工のポイントをそれぞれ解説します。

 

  • 切削性
  • 溶接性

 

 

切削性

 

二相系は強度が高いステンレスで切削がかなり難しいです。加えて、オーステナイト同様に加工硬化するため、切削することでより硬さが増加してしまいます。

 

上手く切削するには、超硬合金製の工具を使用したり、切削速度を遅くし切り込み量を小さくするなどの対策が必要です。

また、リーン二相系であれば硬度が和らぐので、切削が必要であればリーン二相を選ぶのも良いでしょう。

 

 

溶接性

 

二相系の各特性は、オーステナイトとフェライトの2つの組織がバランスよく存在することで発揮されます。

しかし、溶接による加熱や過冷却でフェライト相が増加すると、耐食性の低下などのデメリットが生じる可能性が高いです。

 

溶接のポイント
  • 過大・過小な入熱は避ける
  • オーステナイト系と同じパス間温度で行う

 

加えて、冷却速度が速い場合は、フェライト相が増えないように溶接棒を使用して各組織のバランスを保つことも大切です。

 

 

二相ステンレスの用途

 

二相系は強度が高く、少ない資材で済むため構造部材の軽量化が可能です。また、海水の腐食や耐孔食性、耐応力腐食割れに優れており、これらの特性が活かせる場所で多く使用されています。

 

二相ステンレスの用途例
  • 化学プラント

腐食性の高い環境下で使用される配管やタンク、反応器の材料として使用

 

  • 海洋構造物

海水や塩害が問題となる船舶や海洋プラットフォームに利用

 

  • 建材

外装材や耐候性を要求される構造物に使用

 

以上です。株式会社新進では、二相ステンレスなどの様々な金属加工のコーディネートをしています。

お困りの際はお気軽に以下ページよりお問い合わせください。

 

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