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真鍮(黄銅)とは|特徴や成分、性質について魅力を総まとめ
真鍮
2022.7.19
真鍮(しんちゅう)とは、五円玉やトランペットなどの管楽器に使われている金属といえばイメージしやすいでしょう。銅と亜鉛を混ぜ合わせた合金で、比較的安価にも関わらず、強度やしなやかさのバランスも良い優れた金属です。
また、黄金に輝く色調が美しく、しかも熱による加工がしやすいため、アクセサリーやインテリアなど生活の身近な製品にも用いられています。
今回はそんな真鍮の歴史から特徴・成分、種類や用途まで、その魅力をすべて網羅し、解説していきます。
「そもそも真鍮とはどんな金属なのか?」「真鍮とはどんな用途で使われているのか?」このような疑問や興味をお持ちでしたら、是非参考にしてみてください。
真鍮とは?歴史とその魅力
真鍮が世界史上において登場するのは、紀元前20世紀頃のローマ帝国といわれています。さまざまな文献から当時流通されていた貨幣や武具の素材に、銅と亜鉛の合金が用いられていたことは明らかです。
一方、日本で真鍮が用いられるようになったのは、江戸時代中期以降であると貿易文書などに記されています。
そして真鍮は、その黄金色の美しさ・加工のしやすさ・耐食性の高さ・剛性の高さによって、太古の時代から現代まで発展を続けています。
工業用部品・楽器・仏具からアクセサリーまで、さまざまな用途で使用されているのは、この真鍮ならではの優れた魅力があるからでしょう。
真鍮と黄銅の違いについて
真鍮はその色合いから黄銅(おうどう・こうどう)とも呼ばれています。英語名はBrassとされていて、トランペットやトロンボーンなど、真鍮で作られた金管楽器の楽団をブラスバンドというのはこの事に由来しています。
真鍮はいわゆる慣用名で、JIS規格の名称が黄銅ですが、銅と亜鉛の合金という点において両者に違いは何らありません。
真鍮の成分と種類
真鍮とは、銅(Cu)に亜鉛(Zn)を添加した合金のことで、亜鉛の含有量が20%以上のものを指します。合金学的には、以下の2つに分けられます。
- α黄銅:亜鉛の含有量38%以下
- α+β黄銅:亜鉛の含有量38%以上
この中でも、亜鉛含有量が30%・35%・40%のものは、それぞれ70/30黄銅・65/35黄銅・60/40黄銅と呼ばれています。亜鉛含有量により特性は大きく変わってくるため、それぞれの合金に下記のような名称がついています。
α黄銅 | |
5%亜鉛黄銅 (gilding metal) | 貨幣・メダル |
10%亜鉛黄銅(Commercial bronze) | 絞り加工品、模造金箔 |
15%亜鉛黄銅(red bronze) | 建築金具、ファスナ |
20%亜鉛黄銅(tombac) | 装飾金具、楽器 |
35%亜鉛黄銅(65/35brass) | 装飾品、各種日用品 |
(α+β)黄銅 | |
40%亜鉛黄銅(muntz brass) | ボルト・ナット、熱交換器用管 |
特殊黄銅について
真鍮に耐食性や機械的性質・被削性などを高める目的で第3元素を添加したものが特殊黄銅です。
上記の第3元素を真鍮に添加する事でさらに実用性が高まります。例えば、スズを添加すると脱亜鉛腐食が抑えられ、耐海水性が必要とされる船舶用部品に用いられます。
70/30黄銅や、60/40黄銅にスズを1%添加した特殊黄銅は、それぞれアドミラルティ黄銅・ネーバル黄銅と呼ばれ、加工材や鍛造材として使用されます。
真鍮の特徴や性質
銅単体や、他の金属にはない真鍮の特徴や性質として代表的なものは、以下の6つが挙げられます。
- 色調の美しさ
- 電気伝導性が高い
- 金属毒性がない
- 複雑な形状でも加工がしやすい
- 耐食性に優れている
- 比較的安価である
デザイン性に富んだインテリアやアクセサリー、文房具など生活に身近な製品に真鍮が多く使われるのは、色調の美しさと加工のしやすさからです。
また、電気を通しやすい特徴(電気誘導性が高い)から、コンセントやコネクター・配線器具に使用されています。
金管楽器に関しても、複雑な形状に加工しやすくかつ耐食性があり、音が響きやすい真鍮の性質がフルに活かされています。金や銀などに比べて素材が安価な点も、コストパフォーマンスの面で優れているといえるでしょう。
色調が美しい
真鍮の一番の魅力は、その黄金色の美しい色調といっても過言ではありません。色調は亜鉛の成分含有量によって変化し、7%まではいわゆる銅色で、増加と共に黄味を帯びていきます。
銅(Cu) | 亜鉛(Zn) | 色調 | JIS規格 | 特徴 |
90% | 10% | 黄味を帯びた赤色 | 丹銅
(赤色黄銅) |
|
80% | 20% | 淡橙色 | ||
70% | 30% | 緑味を帯びた黄色 | 70/30黄銅 |
|
65% | 35% | 黄金色 | 黄銅 | |
60% | 40% | 赤味を帯びた黄金色 | 60/40黄銅 |
時間が経つと味わいが出る
真鍮の魅力でもある美しい色調は、時の流れと共に酸化して、まるでアンティークのような味わい深さを醸し出します。
製品を使い込むほど深い色合いに表情を変えていく点は、真鍮の一番の魅力であり、使う人の愛着もより深まるといえるでしょう。
電気を通しやすい
真鍮は銀の次に電気を通しやすく、その伝導率は銀を100とすると、真鍮は97以上といわれています。
真鍮がコンセントやコネクターなど接続部品の素材に使われるのは、銀より安価でかつ、電気伝導性の高い点が有効に利用できるからです。
毒性がない
水銀やカドミウム、鉛のように酸やアルカリと反応しやすい重金属は、人体に影響をおよぼす強い毒性を持っていますが、真鍮にはこの金属毒性がありません。
ただし、真鍮は汗や脂など汚れを放置すると、緑青(ろくしょう)と呼ばれる青っぽいサビが現れます。
緑青は、以前は猛毒という説が一般的でした。しかし、1984年にその説を否定するデータが出てきており、近年の研究では緑青の毒性は極めて低いことがわかっています。
真鍮の加工について
真鍮はアクセサリーによく使われる金属です。これには2つ理由があり、ひとつは見た目が美しいこと、もうひとつは加工がしやすいことが挙げられます。
真鍮は柔らかいので、広げる・伸ばす加工がしやすいです。また、削り出して形を整えることもしやすいので、いろいろなものを作ることができます。
さらに、高温状態で形を変えやすいので、しっかりと熱すれば複雑な形状を作ることも可能です。
真鍮とめっきの違い
真鍮とは銅と亜鉛の合金で、削ってもその中身は変わりません。一方、めっきは安価な地金の上から金などの高価な金属をコーティングしたもの。製品の劣化やサビ、摩耗を防ぐ効果もありますが、摩耗などで削れてしまうと中の地金が見えてしまいます。
真鍮とめっきは一見似た色調のため、区別がつきません。いずれにしろ各々一長一短があるため、状況や目的に応じて選びましょう。
メリット | デメリット | |
真鍮 |
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|
めっき |
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真鍮製品の保存方法やメンテナンス
真鍮製品は、日々使うごとに深まる色調の変化も楽しめますが、劣化させず使用するにはこまめなメンテナンスが必要になります。
まずは、サビを防ぐためにも通気性の良い場所に置き、毎日使わないものは箱の中に乾燥剤や除湿シートを入れて保存しましょう。
アクセサリーなどは、身に付けたあと乾いた布で皮脂や汚れをふき取るだけでも黒ずみ防止になります。くすみが気になる場合は、下記の様に家庭にある身近なものからホームセンターで入手できる専用のクロスや研磨剤などでメンテナンスして、輝きをよみがえらせましょう。
- 酢(汚れに応じ5分~1時間浸けた後に磨く)
- 重曹(水で溶いた重曹で磨く)
- ハンドクリーム(布に着けてなじませると変色を防ぐ効果あり)
- 真鍮専用ポリッシュクロス
- 金属用の研磨剤
- メガネ・アクセサリー用の超音波洗浄機
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