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銅の溶接が難しい理由|各方法と行う場合のポイント
銅
2022.6.8
銅は熱に弱く200℃以上で軟化しやすいので、溶接作業は難しいといわれています。
更に、熱伝導率も高いので、溶接部分を加熱した際に母材部分に熱が逃げてしまいやすいです。作業を行う際には、母材を余熱しておき熱による影響を下げる工夫も必要です。
溶接時には、割れやブローホールといった欠陥にも注意しなければなりません。
例えば、微量の酸素が含まれているタフピッチ銅を母材に使用してしまうと、溶接時に酸素と水素が化合してしまい、割れやブローホールの原因になってしまいます。
銅に適した溶接方法には、ガス溶接やイナートガス溶接、レーザー溶接、ろう接などがあります。母材の大きさや加工形状に合った方法や条件を設定するのが大切です。
本記事では銅の溶接が難しい理由や溶接方法、作業時のポイントをわかりやすく解説していきます。
銅の溶接が難しいとされる理由
銅は他の金属と比較して、熱伝導率が高い特徴を持っているので、溶接作業が難しいとされています。他の金属と銅の熱伝導率を比較した表は、以下の通りです。
金属 | 熱伝導率 |
銅 | 約380W/m・K |
鉄 | 約60W/m・K |
ステンレス | 約15W/m・K |
アルミニウム | 約120W/m・K |
このように銅の熱伝導率は高く、鉄の約6倍、ステンレスの約24倍です。
溶接作業は溶接したい部分を加熱し母材やろう材を溶かし、その後冷却し固めることによって2つの素材をくっつけます。熱伝導率が高い金属では、溶接部分を加熱してもそれ以外の部分に熱が逃げてしまい、作業効率が悪くなってしまいます。
更に、銅は熱に弱い金属です。200℃を超えると軟化してしまい変形する可能性がありますし、冷却の際に割れが発生する恐れもあるのでご注意ください。
銅の溶接でおこる欠陥
溶接作業時には、割れとブローホールと呼ばれる欠陥の発生に注意する必要があります。
溶接作業時に発生する割れは、高温割れと低温割れなどに分類可能です。
- 高温割れ:金属の凝固中に発生する割れ
- 低温割れ:冷却時に発生する割れ
銅は熱に弱く変形しやすいので、溶接時には高温割れに特に注意しましょう。
また、母材にタフピッチ銅を使用した場合、溶接中に水素と母材の中に含まれていた酸素が化合してしまい、水蒸気となって割れが発生するケースもあります。
ブローホールとは、水分や油などの不純物を含んだまま溶接してしまい、溶接後に空洞となってしまう現象です。空洞が生まれた分、ブローホール部分は強度が下がってしまい金属疲労などによる結合部の破断を招く恐れがあります。
割れ同様にブローホールも、中に酸素が含まれるタフピッチ銅を母材にした際には発生しやすいです。ブローホールの発生を抑えるには、溶接後の冷却作業に時間をかけ、脱ガスをするのがおすすめです。
銅に用いられる溶接方法と内容
溶接方法には様々な種類があり、金属の種類や大きさ、加工形状に合わせた方法を選択するのが良いでしょう。適した溶接方法を紹介していきます。
- ガス溶接
- イナートガス溶接
- レーザー溶接
- ろう接
ガス溶接
ガス溶接とは、酸素とアセチレンの混合ガスの燃焼熱を活用する方法です。母材が酸化してしまうのを防ぐために、フラックスを使用します。
作業時には、以下の点に注意をしましょう。
- フラックスは腐食性が強いので、溶接後に洗浄と除去工程を行う
- 10%以上の錫を含む青銅では、溶け込みができるだけ小さくなる条件で加工する
- 黄銅は作業時の熱で亜鉛が蒸発してしまうので注意する
亜鉛が蒸発してしまうと、白煙の酸化亜鉛が発生し作業環境を悪くしてしまいます。亜鉛の蒸発により、ブローホールも発生しやすくなるのでご注意ください。
イナートガス溶接
イナートガス溶接とは、フラックスを使用せず不活性ガス雰囲気中で母材の酸化を防止しながら行う方法です。TIG溶接とMIG溶接に分けられます。
TIG溶接は、厚みが6mm以下の加工に適しています。MIG溶接は反対に厚さ6mmを超える銅の溶接に向いています。
イナートガス溶接は熱集中性が良く、発生させたガスの中で作業を行うので大気中の酸素による影響を気にする必要がありません。ただし、酸化亜鉛の発生に注意する必要がある黄銅の溶接には不向きです。
レーザー溶接
レーザー溶接とは、レーザー光を用いて母材を溶かし接合する方法です。銅には光沢があり光が反射してしまいやすいので、高出力のレーザーを使用する必要があります。
その一方で、レーザー溶接は局所的な溶接も可能であり、作業時に母材に熱が広がることも抑えられるメリットがあります。銅に対応している高出力の機種さえ用意できれば、適した方法といえるでしょう。
作業時には割れやブローホールといった溶接欠陥に注意する必要があります。
ろう接
ろう接とは、母材を溶かして接着するのではなく、溶接部分のスキマに母材よりも融点の低い金属や合金を長し固める方法です。
融点が450℃を超えるろう材を使用する場合には「ろう付」、450℃未満のはんだを使用するろう接を「はんだ付け」と分類しています。
ろう付は使用するろうの種類によって、更に以下の種類に分類可能です。
- 銀ろう付
- 黄銅ろう付
- リン銅ろう付
- 銅ろう付
- ニッケルろう付
母材を溶かす溶接と異なり、ろう接は母材と異なる「ろう」を用いて母材同士を接着します。そのため、接着部分は母材と「ろう」が溶け合った不均一な合金層が発生します。ろう接時には、合金層の性質を考慮して「ろう」を選択しましょう。
銅の溶接を行う場合のポイント
本記事で解説してきたように銅の溶接は難しく、作業時には母材の特徴や大きさに合った溶接方法を選択する必要があります。
また、銅は熱に弱く割れやブローホールなどの溶接欠陥も発生しやすいので、冷却時間や余熱時間にも気を配りましょう。
作業時に特に注意しておきたいポイントは、以下の通りです。
- 溶接部分以外に熱が逃げるのを避けるため、作業時には十分に余熱をしておく
- 割れの発生を防ぐためにタフピッチ銅の使用は避け、無酸素銅やりん脱酸銅を使用する
- 熱膨張しやすいので厚みのある銅板を溶接する際には、拘束しすぎないようにする
溶接時に母材を拘束しすぎてしまうと、熱膨張に耐えきれず母材が割れてしまう恐れがあるのでご注意ください。
銅合金の溶接におけるポイント
銅と別の金属を合成している銅合金では、溶接時には更に注意が必要です。母材として使用する銅合金の特徴をよく理解して作業にあたるようにしましょう。具体的には、以下の内容に注意が必要です。
銅合金 | 作業時のポイント |
黄銅 | 亜鉛の蒸発や酸化亜鉛の発生に注意する |
青銅 | 溶着部分の割れに注意が必要
ニッケルや鉄、マンガンなどの添加物を加える |
白銅 | 割れとブローホールの発生に注意する
母材に含まれる不純物や酸素をできるだけ排除すると割れの発生を抑えられる ブローホールの発生は、芯線中にチタンを添加すると抑えられる |
銅と異種材料との溶接について
銅や銅合金には様々な種類がありますし、異種材料にも様々な種類があるので、母材に合わせた溶接方法を選択する必要があります。
例えば、純銅と鉄を溶接する場合、純銅は鉄よりも融点が低く熱にも弱いので余熱が必要です。
その他にも、ステンレス鋼と銅を溶接する際には、融点の差が大きいので溶接時には割れに注意しなければなりません。黄銅と異種材料を溶接するときには、酸化亜鉛の発生に注意しましょう。
銅と異種材料を溶接する際には、母材の特徴を理解するだけでなく溶接方法や設計を工夫するのもおすすめです。
溶接方法は細かい部分の溶接がしやすいTIG溶接やMIG溶接が適しています。設計段階では溶接作業しやすい形状かどうか、考慮しておくのが大切です。
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