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鉄の溶接方法とポイント|溶接欠陥への対策を解説

2023.7.10

鉄は溶接がしやすい金属に分類できます。しかし、含まれる炭素の量で鉄の種類が異なり、中には溶接が難しいものがあるため注意が必要です。

また、溶接方法は様々ありますが、それぞれに特徴が違い、対応を間違うと溶接欠陥を起こしてしまいます。欠陥が起きると、強度が大きく損なわれるためとても危険です。

 

この記事では、鉄の溶接に関するポイントや注意点をまとめました。読めば概要は全て押さえられるので、鉄の溶接をする場合はぜひ参考にしてください。

 

 

鉄は種類によって溶接の難易度が違う

 

基本的に鉄は、溶解する温度や熱の伝わりやすさなどの性質が、溶接に向いている金属です。そのため、溶接はやりやすいと言えますが、鉄の種類によっては不向きなものもあります。

 

溶接に不向きな鉄

炭素量の多い鋼炭素鋼

 

鉄は炭素が多いと、硬度が上がり脆くなります。溶接では、急激な温度の上下があるため、さらに硬化して伸びが失われ、溶接割れが生じやすくなります。

そのため、溶接に適した炭素量の少ない鉄(低炭素鋼)をできるだけ選ぶことが大切です。

 

 

溶接におすすめの鉄材

 

溶接には炭素の少ない低炭素鋼が向いています。代表的なものは次の2つです。

 

  • SS材(一般構造用圧延鋼材)
  • SM材(溶接構造用圧延鋼材)

 

この2つは炭素量がおよそ0.3%以下。SS材で有名なSS400は、代表的な材料で流通量も多いです。

SM材は溶接に最も適した材料で、溶接が最も重要とされる船舶でよく使用されています。

 

 

鉄を溶接する方法とポイント

 

溶接の方法は様々ありますが、鉄で用いられるのは次の3つです。それぞれの内容と、鉄で使用する際のポイントを解説します。

 

  • TIG(ティグ)溶接
  • 被覆アーク溶接
  • MAG(マグ)溶接

 

 

TIG(ティグ)溶接

 

電極にタングステンを、アルゴンガスなどをシールドに使用する溶接法です。電極と金属材の間に、気体放電現象(アーク)を発生させて行います。

TIG溶接は、電極が交流と直流に別れますが、鉄の場合は必ず直流を使用します。スイッチひとつで切り替えられる溶接機が多いので、気をつけなくてはいけません。

 

 

被覆アーク溶接

 

電極として被覆アーク溶接棒を使用し、アークを発生させて、その熱で行う溶接法です。溶接棒の被覆剤が熱で分解されて、シールドガスとなりアークを大気から守ってくれます。

溶接棒が少しずつ短くなるため、先端を材料に近づける操作が必要です。また、電流が大きくても小さくても欠陥が出やすくなるので、経験と知識が大きく左右します。

 

 

MAG(マグ)溶接

 

被覆アーク溶接棒に代わり、コイル状に巻かれたワイヤーを電極に使う溶接法です。発生したアーク熱でワイヤーと金属を溶かして溶接します。

ワイヤーは機械で自動的に送られ、母材への溶け込みも深いので作業はしやすいです。その反面、風によりシールドガスが乱れて、溶接不良を起こす可能性があるため、外での作業は注意しなくてはいけません。

 

 

鉄の溶接不良とその内容

 

溶接は経験と知識がとても大切な作業です。鉄は溶接がしやすいとは言え、下手に行えば次のような不良を起こす可能性はあります。

 

溶接不良の種類
  • 溶込み不良
  • 融合不良
  • スラグ巻込み
  • ブローホール
  • ピット
  • 割れ
  • アンダカット
  • オーバーラップ

 

この中で、特に起きやすい溶接不良を3つ紹介し、それぞれの対策を解説します。

 

 

溶込み不良

 

設計上、溶け込まないといけない箇所が溶け込まず、不完全になった状態です。表面からはわからないため、とても厄介な不良と言えます。

溶込みが浅いと、継手部分の強度が非常に低くなり、場合によっては腐食することもある欠陥です。

 

この欠陥は、溶接部への熱が十分でなかったことが原因。しっかりと熱量を加える、トーチで狙う位置を外さない、開先角度を適切に保つことがポイントになります。

 

 

ブローホール・ピット

 

溶接した箇所の内部にできる空洞をブローホール、空洞が表に現れた状態がピットです。発生したガスが侵入して、そのまま閉じ込められたことで発生します。

 

原因は様々ありますが、対策としてはシールドガスを適切に保つ(多くても少なくてもダメ)、母材の汚れを除去する、屋外では風に注意することがポイントです。

 

 

溶接割れ

 

溶接した部分が割れる欠陥です。溶接欠陥では最も重大なもので、発生すると安全性が大きく削がれてしまいます。

溶接割れは、作業をしている際の高い温度が原因で起きる高温割れと、作業後の冷却時に起きる低温割れの2つに分類できます。

 

分類 名称
高温割れ 凝固割れ
延性低下割れ
液化割れ
低温割れ ビード下割れ
ルート割れ
止端割れ
横割れ
ラメラテア

 

さらに細かくすると、上記のように9つに別れます。それぞれで原因は異なるため、溶接割れへの対策はそう簡単ではありません。

 

 

鉄と異種材料との溶接について

 

溶接では、鉄と鉄ではなく、鉄と他の金属を接合することもあります。その組み合わせは非常に多いですが、全てが溶接できるわけではありません。金属によっては、接合部がとても硬くなって脆さが増し、強度が大きく下がってしまいます。

 

鉄との溶接が難しい金属
  • アルミニウム
  • チタン
  • タングステン
  • ベリリウム

 

これらは特に溶接が難しく、ほぼ不可能と考えて良い組み合わせです。鉄と他の金属を溶接する場合は、できるかどうかの判断も必要なので大変難しいと言えます。

 

ですが、ろう付けや接着、リベットやボルトと接合する方法は他にもあります。鉄の溶接でお困りの際は、お気軽に次のページよりお問い合わせください。

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