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ティグ溶接とは?|仕組みと特徴、メリット・デメリットを解説

溶接

2024.8.8

ティグ(Tig)溶接は、アーク放電を利用した溶接法のひとつです。電極にはタングステンを使っていて、タングステンが溶けにくいので「非消耗式のアーク溶接」に分類されています。

 

また、ティグ溶接は不活性ガス(イナートガス)を使用しているのも特徴のひとつです。この不活性ガスにはアルゴンを用いているため、ティグ溶接は別名「アルゴン溶接」とも呼ばれています。

 

この記事では、ティグ溶接の仕組みや特徴を紹介し、他のアーク溶接と比較してどんなメリット・デメリットがあるのかもまとめました。

加えて、ティグ溶接が難しいともされる理由も解説しましたので、深掘りした概要を知りたい方は最後までご覧ください。

 

 

ティグ溶接の仕組みと特徴

ティグ溶接はTIG溶接とも書きますが、これはタングステン・イナート・ガス(Tungsten Inert Gas)の頭文字をとったものです。電極にタングステンを使用し、発生するアーク光の周囲を不活性ガスで覆いながら溶接するため、この名前が付けられています。

 

不活性ガスにはアルゴンやヘリウムを使用していますが、これは溶接する金属と反応しにくいためです。このガスがないと、金属が酸素等と反応して欠陥を引き起こす可能性が高くなります。

 

 

アーク溶接との違い

 

アーク溶接とは、アーク光を用いて行う溶接方法です。さらにアーク溶接は、電極が溶ける消耗式と電極が溶けない非消耗式の2つに分類でき、そのうちの非消耗式がティグ溶接に当たります。そのため、ティグ溶接はアーク溶接のひとつなのです。

 

電極の種類
  • 消耗式の電極:一般軟鋼用、ステンレス用等
  • 非消耗式の電極:タングステン

 

タングステンの融点は金属の中でもっとも高く(3,000℃以上)、高い電流を通しても溶けにくいです。これにより、電極と金属の距離を一定に保つことができるので、アーク長が変わらずに安定した溶接ができます。

 

 

直流・交流による違い

 

ティグ溶接で使用する溶接機には直流と交流の2タイプがあります。溶接機は対象の金属によって使い分けており、具体的には次の通りです。

 

  • 直流溶接機:全ての金属
  • 交流溶接機:アルミとマグネシウム

 

交流溶接機にはクリーニング作用という機能があります。クリーニング作用とは、母材を陰極にすることでアルミやマグネシウムの酸化皮膜を除去することができる仕組みです。

 

交流は陰極と陽極が交互に切り替わるため、酸化皮膜に覆われていても安定した溶接ができます。

 

 

ティグ溶接のメリット・デメリット

 

▲アルミをティグ溶接する様子

 

タングステンを使用したティグ溶接では、他のアーク溶接と比較して様々なメリットがあります。それと同時にデメリットも多くあるので、それぞれの内容を具体的に解説します。

 

 

メリット

 

ティグ溶接のメリットは次の3つです。

 

  • 接合部が綺麗で強度も高い
  • 様々な金属や形状に利用できる
  • 安全かつ長時間の作業が可能

 

 

接合部が綺麗で強度も高い

ティグ溶接では、アーク光が不活性ガスで守られています。そのため、溶けた金属が外部の空気と接触しないので、酸化されずに綺麗な状態で接合が可能です。

 

また、溶接部が酸素や窒素に触れると、そのまま金属に溶解されて気孔が出来ます。気孔はピットやブローホールといった欠陥になる可能性が高く、強度が低下する恐れもあるため防止することが重要です。

 

 

様々な金属や形状に利用できる

電極に溶融点の高いタングステンを使っているため、高い電流を流すことができます。つまり、チタンなどの溶けにくい金属でも溶接が可能です。

 

加えて、酸化皮膜に覆われたアルミなどは、一般的な溶接ではかなり接合が難しいですが、クリーニング作用のある交流ティグ溶接なら問題なくできます。

さらには、溶接姿勢の制限もほぼなく、溶接棒を使わずに母材同士を接合する共付けも可能です。

 

 

安全かつ長時間の作業が可能

被覆アーク溶接では作業中に火花が出ますが、ティグ溶接では発生しません。なので、火災事故の危険性がなく、引火して爆発といった問題も起こりません。

 

また、音も小さいので騒音のトラブルがなく、加えて電極が溶けないので長い時間でも作業が可能です。

 

 

デメリット

 

ティグ溶接のデメリットは次の4つです。

 

  • 溶接速度が遅い
  • コストが高い
  • 外部環境の影響を受けやすい

 

 

溶接速度が遅い

作業を手動で行っており、他と比べると溶接の速度は遅いです。溶接棒(溶加材)を使用する場合は、さらに難度がアップするので速度も当然遅くなります。

 

そのため、大量生産が必要な金属製品には向いていません。逆に、丁寧な仕上がりが求められる製品には、溶接速度が遅く綺麗に接合できるティグ溶接がおすすめです。

 

 

コストが高い

ティグ溶接ではアルゴンなどの不活性ガスを使用しますが、このガスはとても高価で費用がかなりかかります。加えて、電極のタングステンもかなり高価なので、溶けないので長期間使えますが、導入時にコストがかかる点もデメリットです。

 

また、作業時間が長くなるので、人件費も多くなりやすいです。そのため、付加価値の高い製品を製造しないと収支のバランスが取れなくなります。

 

 

外部環境の影響を受けやすい

ティグ溶接は、不活性ガスでアーク光を覆うことにより綺麗な仕上がりを保っています。風が強い環境だと、ガスが吹き飛ばされて溶接部が酸素などに触れてしまい、欠陥を引き起こす可能性が高いです。

 

そのため、基本的には屋内での作業となります。もし屋外での作業であれば、養生して風除けを作ったり、シールドガスの量を増やすなどの対策が必要です。

 

 

ティグ溶接が難しいとされる理由

 

 

ティグ溶接は、接合の速度が遅いのでゆっくりと丁寧に作業をすることができます。加えて、不活性ガスにより酸化等の欠陥も防止できるため、比較的作業がしやすい溶接方法です。

 

その一方で、ティグ溶接は作業が難しい、とも言われていますが、これには大きく以下2つが原因だと考えられます。

 

難しいとされる主な要因
  • 時間やコストがかかるため練習ができない
  • 被覆アーク溶接とはトーチの動かし方が異なる

 

ティグ溶接で使用するタングステンや不活性ガスはとても高価です。導入するにもハードルが高く、さらには練習するのもコストがかかるため、技術の習得が難しいと考えられます。

 

また、タングステンの電極は溶けないので、トーチは金属と並行に動かします。しかし、被覆アーク溶接では電極が溶けるので、少しずつ金属に近づけながら作業するわけです。

この違いに慣れない方は、ティグ溶接は難しいと思う場合もあるでしょう。

 

以上です。株式会社新進では、ティグ溶接を始めとした金属加工のコーディネートを受け付けています。

お困りの際はお気軽に以下ページよりお問い合わせください。

 

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