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タップ加工とは?|工具の種類やネジ穴を開ける注意点を解説
穴あけ加工
2023.6.12
タップ加工とは、ボルトやネジを差し込めるように、雌ネジの山を作る作業です。専用の工具を使い、削るか押し広げるかして形を整えていきます。
工具は多くの種類があり、それぞれで特徴や用途が違います。そのため、そのまま工具を使用しても、ネジ山は上手く作れません。適切な工具と順序を押さえる必要があります。
この記事では、タップ加工の概要と工具の種類、流れを解説しました。行う場合のポイントもまとめましたので、加工する際の参考としてご覧ください。
タップ加工とは?
タップ加工は、端的に言えばネジ穴を作る作業です。あらかじめ開けた穴へ、表面がギザギザの工具を差し込み、回転させて雌ねじを作ります。
この工具自体をタップと呼んでいるため、この名称が一般的になっています。
作業は電動ドリルなどの機械を使うケースが多いです。しかし、手動で回転させるタップハンドルでもねじ穴は可能で、万力があれば自宅でも十分行えます。
ドリル加工やリーマ加工との違い
同じような作業として、ドリルとリーマの2つがあります。ですが、この2つはタップ加工と明確な違いがあり、その内容は次の通りです。
工具 | 作業内容 |
ドリル | 材料に穴を開ける |
リーマ | 穴を広げる・綺麗に整える |
タップ | ネジ穴に仕上げる |
タップ自体に穴を開ける能力はありません。そのため、ネジ穴を作る前には、必ずドリルで下穴を開ける必要があります。
タップ加工の種類
タップ加工は大きく以下2つの方法に分類されます。それぞれの特徴を順に解説しましょう。
- 切削式
- 転造式
切削式タップ加工
金属を削りとってネジ穴にする方法です。切りくずが出るので、処理に注意しながら作業を行う必要があります。
この方法は、下穴と工具のサイズ選びがとても重要です。選択したドリルとタップでネジの大きさが決まるので、間違えば雄ネジが閉まらなくなります。
転造式タップ加工
金属に強い力を加えて、ネジ穴の形に変形させる方法です。押し広げるように加工するので切りくずが出ません。そのため、タップの破損も起きにくくなります。
この方法も下穴の大きさがとても重要です。また、あまりに硬い金属や脆いものは、上手く転造できないので使えません。
タップ加工で使用する工具の種類
雌ネジを作るには、タップと呼ばれる専用の工具を使います。しかし、タップにも種類があるため、ここでは代表的な以下4つをそれぞれ紹介しましょう。
- スパイラルタップ
- ポイントタップ
- ロールタップ
- ナットタップ
スパイラルタップ
溝が斜めにねじれているタップで、突き抜けない穴(止まり穴)に使用されます。回転させると、切りくずが上に上がってきやすい構造なので、切りくずを排出しやすいです。
切りくずが繋がりやすい金属に向いているため、柔らかいアルミや銅が適しています。
ポイントタップ
切りくずがタップの進行方向に進む構造で、突き抜ける穴(通り穴)に使用されます。工具の先(食付き部)の溝が斜めになっていて、少しずつ刃が金属に食いつくような作りです。
切りくずが下に溜まるので、止まり穴には使えません。逆に、切りくずが詰まる心配が少ないので、安定して加工することができます。
ロールタップ
金属に圧力をかけてネジ穴を作る転造式のタップです。切りくずが出ないので溝がなく、溝なしタップの1つとされています。
掃除の時間やコストを削減できて、詰まりなどの心配もありません。また、力を加えて形を作るので、ネジ山の耐久性がとても高くなります。
ナットタップ
ナットのネジ立てに使用するタップです。加工をするねじ部と柄の部分(シャンク)が長くなっており、ナットを連続して作り貯めておくことができます。
タップ加工の進め方
タップ加工の手順はとてもシンプルです。
ただし、それぞれにポイントがありますので順に解説します。
下穴を開ける
タップは穴を開けられる構造ではないので、まずはドリルで下穴を作ります。最終的な雌ネジのサイズを考慮して、下穴の大きさを決めなくてはいけません。
小さい穴は一発で開けて構いませんが、大きい径は少しずつサイズを大きくするように心がけるのがポイントです。
また、斜めに穴を開けると、ネジ山を作ってもボルトなどが垂直になりません。真っ直ぐにドリルを進めることも大切です。
タップでねじ山を作る
下穴にタップをねじ込みます。その際、穴に合わせて真っ直ぐに工具を押し当てることが重要です。斜めにすると、ネジ山それぞれのバランスがおかしくなります。
また、工具が傷んでいると加工精度が落ちてしまいます。使用する前は、必ずタップの状態を見てから行うことも大切です。
タップ加工を行う場合の注意点
高い精度の雌ネジを作るには、次の4つに気をつけなくてはいけません。それぞれ順に解説します。
- 目的に合ったタップを使用する
- 下穴径とタップの大きさを合わせる
- 切削油を使用する
- タップの切削条件に気をつける
目的に合ったタップを使用する
ネジ山は通り穴と止まり穴の2タイプあります。通り穴ならポイントタップ、止まり穴ならスパイラルと、用途に沿ったものを使いましょう。
もちろん、金属の種類によっても使い分ける必要があります。硬さなどを考慮して、適切なものを選びましょう。
下穴径とタップの大きさを合わせる
小さい下穴に大きなタップを入れると、山が大きくなりすぎます。また、その逆も不良の原因なので、タップのサイズは注意しましょう。
なので、ネジ山を作った後の大きさを考慮し、下穴を開けることが大切です。タップの精度は、ドリルを使用する段階で決まります。
切削油を使用する
切削油を使うと摩擦抵抗を大きく下げられます。タップ加工は他よりも形状が複雑なので、必ず使用するようにしてください。
切削式でも転造式のどちらでも、切削油は使うようにしましょう。特に切削式は、切りくずが詰まってタップが折れる可能性も高いです。
タップの切削条件に気をつける
回転速度が速すぎると、金属にタップが上手く食いつきません。逆に、遅すぎると作業が進まないので、適切な条件を設定して行いましょう。
この条件は金属によっても違います。例えば、アルミであれば速度は速い方が良いです。遅いと切りくずが溶着する可能性があります。
ステンレスなら速度は遅くしましょう。熱伝導率が悪いので、工具に熱がこもり金属を痛める恐れがあります。
以上、タップ加工についてご紹介しました。
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