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マルテンサイト系ステンレスとは?|種類や耐食性、磁性について解説

ステンレス

2024.11.7

マルテンサイト系ステンレスは、鉄を主成分として炭素やクロム(Cr)を添加した金属です。ステンレスの中でも比較的硬度が高く、強度や耐摩耗性に優れているため、特に工具や刃物、機械部品に使用されることが多いタイプです。代表的な種類にはSUS410、SUS420、SUS440Cなどがあります。

 

このステンレスは「マルテンサイト結晶」と呼ばれる構造をしており、急冷によって硬化する特性を持っています。オーステナイト系ステンレスと比較すると、硬度が高く、強度にも優れますが、延性や耐食性には劣るため、使用環境に応じて選択することが重要です。

 

この記事では、マルテンサイト系ステンレスの種類やその成分、特性などをまとめました。加えて、加工におけるポイントや用途についても紹介しますので、概要はすべて押さえられます。

 

 

マルテンサイト系ステンレスの種類・成分一覧

 

マルテンサイト系は、炭素とクロムを主成分としており、クロム系ステンレスとも呼ばれています。焼入れ・焼戻しの熱処理を行っており、炭素含有量が比較的高く、強度や硬度に優れているステンレスです。

 

炭素とクロムの他にも、マンガンやリンなども含まれており、それらの含有量によって種類も異なっています。以下は、JIS(日本産業規格)に記載されているマルテンサイト系ステンレスの種類とその成分です。

マルテンサイと系ステンレスの成分表

引用:日本工業規格 JIS G 4303:2012

 

 

マルテンサイト系ステンレスの特性

 

マルテンサイト系は、他のステンレスと比較して高い強度や硬度がある点が特徴ですが、それ以外にも特有の性質があります。以下3つの観点からその特性を紹介します。

 

  • 物理的性質
  • 機械的性質
  • 耐食性

 

 

物理的性質

 

代表的なマルテンサイト系の物理的数値は以下の通りです。

引用:ステンレスの導電率、透磁率、熱膨張率などの物理的性質について|ステンレス協会

 

基本的にステンレスは熱伝導率が小さいです。これはマルテンサイト系も例外ではなく、鉄と比べると熱伝導率は½にあたります。

また、密度や熱膨張率などの性質は、オーステナイト系ステンレスよりも小さい値になる傾向にあります。

 

 

磁性について

ステンレスの主成分は鉄です。そのため、一般的にステンレスは磁性を持っています。

これはマルテンサイト系も同様で磁性があり、冷間加工を行うと磁性はさらに強くなる傾向にあります。

 

 

機械的性質

 

マルテンサイト系の機械的性質は以下の通りです。

引用:日本工業規格 JIS G 4303:2012

 

マルテンサイト系は他のステンレスと比べて引張強度や硬度が高く、高炭素になるほどこの傾向が大きくなります。しかし、硬度が高いことで延性が低く、脆い性質があるため曲げ加工などで注意が必要です。

 

また、オーステナイト系とは異なり、低温では強度・靱性とも弱くなります。加えて、高温でも約500℃を超えると強度の低下が大きくなり、脆化現象が生じるため、使用範囲には気をつけなくてはいけません。

 

 

耐食性

 

マルテンサイト系は他のステンレスと比較して耐食性は低いです。これは、成分に炭素が多いことで、本来なら不動態被膜を形成するクロムが炭化物になってしまうため耐食性が下がってしまうのです。

 

しかし、室内や腐食環境が弱い場所であれば耐食性は高いので、使用環境に配慮することが求められます。また、熱処理の内容によっても耐食性は異なっており、焼入れ状態が最も優れています。

 

 

マルテンサイト系ステンレスの加工性

 

マルテンサイト系は、硬度が高いため加工が難しい種類になります。そのため、切削加工等を行う場合は特に注意が必要です。

マルテンサイト系の以下加工について、それぞれの特徴と注意点を解説します。

 

  • 切削性
  • 溶接性
  • 熱処理

 

 

切削性

 

マルテンサイト系は、硬度が高いため切削抵抗が大きく、切削中に工具の摩耗が進みやすいです。対策としては以下の方法があります

 

切削の対策
  • 切削速度を適切に設定し、過度な摩耗を避ける
  • 高品質の切削油を使用して温度上昇を抑制する
  • 切削工具を適切に選定し、シャープなものを使用する

 

ただし、市販されているマルテンサイト系の多くは「焼なまし」の状態です。その場合、切削抵抗は大きくないので、切削加工は難しくありません。

 

 

溶接性

 

マルテンサイト系は溶接割れが起きやすいステンレスです。そのため、予熱温度の設定がとても重要で、一般的には200〜400℃が採用されています。

 

加えて、溶接後は熱が加わったことで硬化してしまうため、熱処理をして延性を回復することが求められます。なお、熱処理は730〜760℃が推奨されている温度です。

 

 

熱処理

 

マルテンサイト系は、硬度を上げるために熱処理(焼入れ・焼戻し)を行うことで、適切な強度と靭性を確保することができます。

 

熱処理の方法
  • 焼入れ

約950〜1,050℃で加熱し、水や油で急冷する

 

  • 焼戻し

250℃(低温)か700℃(高温)で行う

 

ただし、焼入れ温度が高すぎると、残留するオーステナイト組織が多くなり、焼戻しをしても強度が高くならないので注意が必要です。

 

 

マルテンサイト系ステンレスの用途

 

マルテンサイト系は、主に高強度を必要とする部品に使用されます。特に、工具や刃物、軸受(ベアリング)、ピストンリング、シャフト、バルブなど、摩耗に対する耐性を求められる用途で広く利用されています。

 

一方で、耐食性が低いため、腐食環境下での使用には注意が必要です。耐食性を重視する場合は、他のステンレス系(オーステナイト系・二相系など)を選ぶことが推奨されています。

 

以上です。株式会社新進では、マルテンサイト系ステンレスなど様々な金属加工のコーディネートをしています。

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