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フェライト系ステンレスとは?|種類や特徴、用途について解説

ステンレス

2024.11.28

フェライト系ステンレスとは、鉄を主成分として炭素(C)やクロム(Cr)を添加した合金金属です。クロムが含まれるため「クロム系ステンレス」とも呼ばれ、同じグループにはマルテンサイト系ステンレスがあります。代表的な種類としてはSUS430、SUS444です。

 

このステンレスは「フェライト結晶構造」をしており、オーステナイト系よりも強度等は劣ります。しかし、ニッケルの含有量が少ないため安価に取引されていて、家電製品や自動車など幅広く使われているステンレスです。

 

この記事では、フェライト系ステンレスの種類やその成分、特徴などをまとめました。加えて、加工におけるポイントや用途についても紹介しますので、最後まで読めば概要はすべて押さえられます。

 

 

フェライト系ステンレスの種類・成分一覧

 

フェライト系ステンレスはクロムの含有量が多く、約11〜32%まで含まれています。しかし、ニッケルは多く含まれないのでクロム系ステンレスに属しており、一般的にはクロムを18%前後含むことから「18クロムステンレス」とも呼ばれています。

 

同じクロム系ステンレスにはマルテンサイト系がありますが、フェライト系は炭素の含有量が比較的少ないです。以下は、JIS(日本産業規格)に記載されているフェライト系ステンレスの種類とその成分です。

引用:日本工業規格 JIS G 4303:2012

 

 

フェライト系ステンレスの特性

 

フェライト系は他のステンレスと異なる性質があるため、以下3つの観点で解説します。

 

  • 物理的性質
  • 機械的性質
  • 耐食性

 

 

物理的性質

 

代表的なフェライト系の物理的性質は以下の通りです。

引用:ステンレスの導電率、透磁率、熱膨張率などの物理的性質について|ステンレス協会

 

フェライト系はオーステナイト系よりも熱伝導率が高いため、比較的熱を伝えやすい性質をしています。加えて、熱膨張率も小さいため、温度による変化が少なく安定性が高いです。

 

また、フェライト系はマルテンサイト系と同様に、低温では靱性や強度が低下するため注意しなくてはいけません。

 

 

磁性について

ステンレスの主成分は鉄ですので、フェライト系には磁性があります。同じステンレスでもオーステナイト系には磁性がなく、これは含有されるニッケルが多いことが影響しているためです。

 

ニッケルには磁性があり、鉄の磁気の邪魔をして結果的にステンレス全体の磁性を失うという仕組みですが、クロムには磁性がありません。そのため、クロムの多いフェライト系は磁石にくっつくことになります。

 

 

機械的性質

 

代表的なフェライト系の機械的性質は以下の通りです。

引用:日本工業規格 JIS G 4303:2012

 

フェライト系は焼なましを行ったものを一般的に使用しています。焼なましとは熱処理のひとつで、鋼を柔らかくするために行われます。

 

オーステナイト系やマルテンサイト系と比べると、フェライト系は引張強さや耐力に優れるわけではありません。しかし、伸びには優れた性質を持っているため、曲げ加工などには適しています。

 

注意点としては、400℃を超えた高温では引張強さが急激に下がり、クリープ強さも低下します。そのため、高温環境下は避けた場所で使用することが大切です。

 

 

耐食性

 

フェライト系はクロムが多く含まれるため、不動態被膜により耐食性は高いステンレスです。ただし、オーステナイト系が1番耐食性が高いので比較すると劣りますが、マルテンサイト系よりは優れた性質があります。

 

オーステナイト系は550〜800℃程度でクロム炭化物が現れ粒界腐食が進みますが、フェライト系は850℃以上から冷却することで粒界腐食が起きます。粒界腐食は局部腐食のひとつで、これを防ぐには炭素含有量を少なくしたり、ニオブやチタンを添加するなどの対策が必要です。

 

 

フェライト系ステンレスの加工性

 

フェライト系はステンレスの中では加工がしやすい種類に入ります。切削も溶接も容易ですが、それぞれに特徴もありますので以下3つの内容に分けて解説します。

 

  • 切削性
  • 溶接性
  • 熱処理

 

 

切削性

 

難削材のグループに入るステンレスですが、フェライト系は比較的切削がしやすいです。フェライト結晶は柔らかく、急冷してもマルテンサイと呼ばれる硬い結晶に変化する加工変態が起きません。

 

加えて、オーステナイト系のような加工硬化もしにくいので、ステンレスの中では切削が楽です。

切削の難度は「被削性指数」という数値で表します。各ステンレスの数値は以下ですが、高い数値ほど切削がしやすいので、フェライト系は全体的に難度が低いことがわかります。

 

鋼種 被削性指数
オーステナイト系 SUS302 30
SUS303(快削性) 60
SUS304 35
SUS316 45
SUS317 45
SUS347 40

マルテンサイト系

(未硬化処理)

SUS403 50
SUS410 50
SUS416(快削性) 65
SUS420 45
SUS431 50
SUS440F(快削性) 60
フェライト系 SUS405 55
SUS430 50
SUS430F(快削性) 80
SUH446 55

引用:ステンレス (現場で生かす金属材料シリーズ)/丸善出版

 

 

溶接性

 

フェライト系は溶接性にも優れていて、マルテンサイト系の代用としても使われるケースがあります。

 

しかし、溶接の熱影響によって結晶の粒が粗大化(大きい粒子が小さいものを吸収して大きくなること)して、延性などの性能が大きく下がります。これは「475℃脆化」とも呼ばれ、クロムの含有量が多いほどその傾向は高いです。

 

熱影響への対策
  • 作業前の予熱を低くする
  • 溶接後の熱処理で回復する

 

ただし、粗大化した結晶は戻らないので靱性は低いままとなります。

 

 

熱処理

 

フェライト系の熱処理の目的は、加工硬化を元に戻したり、溶接の加熱部で発生した延性等の回復をすることです。しかし、熱処理をしても靱性はそのままなので、結晶の粗大化をさせないことが必要となります。

 

具体的な対策としては、熱処理の過熱を避けることです。ですが、最近のフェライト系は炭素・窒素の含有量を減らしているケースが多く、これにより粗大化が進みやすくなっています。

そのため、チタンやニオブを添加することで、粗大化や粒界腐食を起きにくくしたフェライト系を使用するのが1番の対策です。

 

 

フェライト系ステンレスの用途

 

フェライト系は加工性や溶接性に優れており、ニッケルが含まれていないので価格もお得です。そのため、幅広く様々な場面で使われていますが、オーステナイト系に比べて耐食性は低く、400℃以上の耐熱性や-60℃以下の低温には弱いので、その環境を避けた場所で使用されています。

 

フェライト系の用途
  • 厨房機器
  • 建築内装
  • 電気機器
  • 自動車部品

 

なお、スーパーフェライトと呼ばれる極低炭素・窒素の高純度フェライトもあります。高い耐食性があるためビルやドームなどの屋外部分、空港の屋根、化学プラントに使用されています。

 

以上です。株式会社新進では、フェライト系ステンレスなど様々な金属加工のコーディネートをしています。

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