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オーステナイト系ステンレスとは?|種類や磁性、加工硬化について解説

ステンレス

2024.10.9

オーステナイト系ステンレスは、鉄を主成分として炭素やクロム(Cr)、ニッケル(Ni)を添加した金属です。ステンレスの中では一般的に使用される種類で、SUS304やSUS316などがその代表例です。

 

このステンレスは「オーステナイト結晶」と呼ばれる構造をしているため、その名前が付いています。他のステンレスと比較的すると柔らかいのですが、粘りが強く加工硬化も起きやすいので加工には注意が必要です。

 

この記事では、オーステナイト系ステンレスの種類やその成分、特性などをまとめました。加えて、加工におけるポイントや用途についても書きましたので、概要はすべて押さえられます。

 

 

オーステナイト系ステンレスの種類・成分一覧

 

オーステナイト系ステンレスは、炭素とクロムの他にニッケルを添加しています。そのため、ニッケル・クロム系ステンレスとも呼ばれており、一般的に普及しているステンレスはこのタイプです。

 

ニッケルの他にも、モリブデンやニオブが含まれるものもあり種類は多岐に渡ります。以下の表は、JIS(日本産業規格)に記載されているオーステナイト系ステンレスの種類とそれぞれの成分です。

 

引用:日本工業規格 JIS G 4303:2012

 

 

オーステナイト系ステンレスの特性

 

他のステンレスよりもニッケルなどの含有量が多いことにより、オーステナイト系ステンレス特有の特性もあります。以下3つに分けてそれぞれ紹介します。

 

  • 物理的性質
  • 機械的性質
  • 耐食性

 

 

物理的性質

 

代表的なオーステナイト系ステンレスの物理的数値は次の通りです。

 

引用:ステンレスの導電率、透磁率、熱膨張率などの物理的性質について|ステンレス協会

 

他のステンレスと比べると、熱伝導率は小さく、電気抵抗も大きい傾向です。加えて、熱膨張率が大きく伸び縮みしやすいため、疲労寿命が短いという調査報告もあります。

 

また、オーステナイト系ステンレスは低温時に優れた特性を発揮します。引張強さは上がり衝撃にも強くなり、基本的に低温割れは起きません。

 

 

磁性について

ステンレスは鉄を主成分にしているので、基本的には磁性があります。しかし、オーステナイト系は非磁性なので磁石にくっつきません。

 

これは添加されているニッケルが持つ磁性が影響しています。鉄の磁性とニッケルと磁性が互いに邪魔をし、その結果としてオーステナイト系の磁性が失われてしまうのです。

 

ただし、冷間加工ではわずかに磁性が発生することがあるため、必ずしもないとは言えません。

 

 

機械的性質

 

オーステナイト系ステンレスの種類ごとの機械的性質は以下の通りです。

 

引用:日本工業規格 JIS G 4303:2012

 

マルテンサイト系やフェライト系などの他ステンレスよりも延性に優れ、引張り強度が高く、低音から高温まで安定して優れた機械的な性質を持っています。

 

ただし、加工硬化が大きく、加工度とともに硬さが上がります。SUS301は最もその症状が現れやすいです。

 

 

耐食性

 

オーステナイト系は他のステンレスと比較して最も優れた耐食性があります。ステンレス表面の不動態被膜が耐食性の要因ですが、ニッケルを多く含むオーステナイト系はその修復力が高いです。

 

しかし、SUS304など一部の種類は、550〜850℃の温度で長時間さらされると炭化クロムを作ります。これにより粒界腐食がおき不動態被膜ができにくくなるため、耐食性が大きく劣ってしまいます。

 

 

オーステナイト系ステンレスの加工性

 

オーステナイト系は、一般的には加工がしやすいステンレスです。しかし、条件次第では加工が難しく、欠陥を引き起こす可能性もあります。

 

ここでは、以下3つの加工方法に分けて、それぞれの特徴や加工の注意点を解説します。

 

  • 切削性
  • 溶接性
  • 熱処理

 

 

切削性

 

オーステナイト系はステンレスの中では柔らかいですが、切削抵抗が大きく粘りがあります。加えて、加工中の熱で加工硬化を起こすので、オーステナイト系は切削には不向きなステンレスなのです。

 

対策としては次の3つが挙げられます。

 

対策
  • 切削速度を遅くし熱の発生を抑える
  • 工具(チップ)はシャープなものを選ぶ
  • 加工硬化した表面よりも深い切り込みで削る

 

また、リンや硫黄を添加して切削性を高めた快削ステンレス(SUS303)もありますので、切削する場合はこちらを選ぶのも手段です。

 

 

溶接性

 

溶接性にはとても優れているため、他と比べると作業は楽です。しかし、550〜850℃の温度が長時間続くと粒界腐食がおき、発生したクロム炭化物は硬くもろいので高温割れが起きやすい状態になります。

 

対策としては次の方法があります。

 

対策
  • 過剰な入熱はやめ最小限で行う
  • 炭素含有量0.03%以下の種類を選ぶ
  • チタンやニオブが含まれるものを選ぶ

 

 

熱処理

 

オーステナイト系はクロム炭化物により、硬化や耐食性の劣化が生じてしまいます。加えて、切削加工などにより残留応力がおき、応力腐食割れの原因にもなります。

 

対策として、以下2つの熱処理があります。

 

対策
  • 固溶化熱処理
  • 応力除去焼きなまし

 

固溶化熱処理は、炭化物が析出したオーステナイト系を1,000〜1,100℃に熱し、急冷する作業のことです。炭化物を固溶させて耐食性を回復できます。

応力除去焼なましは、800〜900℃に熱して急冷することで、残留応力を取り除く処理のことです。

 

 

オーステナイト系ステンレスの主な用途

 

オーステナイト系は用途が幅広く、家庭用品から自動車部品、化学工業、建築や原子力発電などで用いられています。

強度や加工性など優れた特性があるため、ステンレスの中では最も使われている種類です。

 

中でも特徴的なのは低温特性を活かした用途です。

 

−162℃の液化天然ガスの輸送船(LNG)や、超電導粒子加速器の使用環境で用いられる絶対温度(1K=−273℃)の状況で用いられていて、これは低温でも機械的性質が低下しないオーステナイト系の特徴を活かしています。

 

以上です。株式会社新進ではオーステナイト系ステンレスなど様々な金属加工のコーディネートをしています。

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